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第10回ひろしま和食料理人コンクール審査結果

広島食道

[投稿日]2025年04月01日 / [最終更新日]2025/05/15

広島県では、食文化の発展と「おいしい!広島」のブランドイメージ向上のため、若手料理人を対象とした広島県主催の料理人コンクールを2014年から実施。

 

第10回目の節目を迎える2025年、去る2月18日に広島女学院大学にて「第10回ひろしま和食料理人コンクール」が行われた。

 

応募資格はいずれも日本国籍を有する40歳以下で、コンクール後も調理技術の向上に務める者。広島県在住者のみならず、どの県からも応募が可能だ。

 

また賞品においては賞金の他、成績優秀者は県内外の料理店等で修業することができ、それにかかる費用を県の貸付制度「広島県調理師等研修資金」を無利子で利用できる特典が与えられ、一定条件によっては返済が不要。最優秀者は広島県主催のプロジェクトにおいて、民間企業との共創企画として新たな弁当の商品開発に携わるなど、活躍の場を拡大する機会が与えられる。

こうした料理人育成のための手厚いサポート付きの取り組みが、全国でも類を見ないコンクールだ。

【成績優秀者へのトロフィー・協賛物品】

 

      

 

【2025年の出場者(順不同、敬称略)】

 

半べえ 三木紀葉

いこいの村広島 増本俊樹

華ごころ 杉原千秋

庭園の宿石亭 麻生司

広島なだ万 大草茂

かなわ 中島洋介

かなわ 加茂金太朗

錦水館 清水颯太

 

 

【審査員(順不同、敬称略)】

●実技審査員

全国日本調理技能士会連合会理事長 木浦信敏

日本料理喜多丘 北岡三千男

半べえ 川村満

半月庵 加藤隆宏

かなわ 戸田豊

稲茶 下原一晃

 

●面接審査員

広島県日本調理技能士会相談役 占部秀雄

ホテル広島サンプラザ 好本和夫

 

 

課題1は「小鯛の姿づくり」を制限時間50分で調理。

これは小鯛を松皮造りにし、大根は網大根に。「調理技術評価試験」といった国家試験でも課される基本的な技術で、小鯛をおろす技術や大根の飾り切りといった包丁の技術を見るものだ。

 

料理店でよく使われる2キロ前後のタイと違い、身が薄い小鯛ならではの難しさや、網大根は塩水に浸してしんなりさせないと美しく開かないなど、コツが必要だという。

 

基本的ゆえに「練習が大切。時間的な難易度としては調理経験5年目の人間であればできていて欲しい」と審査員の川村氏は話す。

 

続く課題2は広島県特産のメバルを用いる「目張の新蕗巻」を制限時間50分で調理。

魚と野菜を煮炊きする技術が問われる課題だ。

 

メバルを開いた時に均等な厚さにすることや、調理した後、料理が冷えるとゼラチン質の多いメバルの皮が縮むため丸まりやすい。「全て計算した上で隠し包丁を入れたり、太さの異なる野菜のどの部分を選び、どう味を均等に入れるかなど、火の入り方を想像し均一に仕上げることは煮方の大切な仕事」と審査員の戸田氏。

  

そして最後は広島が誇る素材「穴子と県産野菜を取り入れた料理」を50分で調理する自由課題。

これは「穴子は熱の入れ方が難しい素材。特に開き方や活かし方を見ています。それぞれ、付いている親方によっても癖が違う」と審査員の北岡氏。

この他、厨房審査では台の使い方やシンクの中の清潔感、手洗いといった衛生、包丁や下処理の技術などをチェック。中でもゴミ箱の中身をのぞいていた審査員は「野菜の皮の厚さに無駄がないか、可食部分をむやみに捨てていないか、を見ています」(北岡氏)と話す。

 

自由課題の料理は以下の通り

 

●半べえ 三木紀葉「穴子の道明寺蒸し」

 

●いこいの村広島 増本俊樹「穴子の飯蒸し えんどう豆餡」

 

●華ごころ 杉原千秋「分葱と若布煮穴子巻き酒粕酢味噌敷き」

 

●庭園の宿石亭 麻生司「地穴子の蕪蒸し 冬の訪れ」

 

●広島なだ万 大草茂「穴子と広島県産小松菜の甘酢あん」

 

●かなわ 中島洋介「穴子と県産野菜の飛龍頭」

 

●かなわ 加茂金太朗「穴子と分葱のカピタン広島レモン釜盛り」

 

●錦水館 清水颯太「穴子と冬大根県産野菜の揚げ庵掛け」
(応募時の料理写真)

 

優勝を飾ったのは的確な技術力などが評価された「広島なだ万」入社18年目の大草茂氏。

「どんな仕事を課題として与えられているか、意識しながら臨みました。何度か参加しており、優勝できて嬉しいです。普段の業務では感じられない緊張感がある中でもきっちりおいしく作れるスキルは料理人にとって必要なこと。今日見えた課題に向かって、また日々の仕事を頑張りたいです」とコメントした。

2位は「半べえ」入社2年目、三木紀葉さん。

「和食を始めて3年目、これからも刺激のある日々を過ごし、頑張りたいです。来年は優勝を目指します」

3位は「かなわ」入社20年目、中島洋介さん。

「特にメバルの料理の時間配分が難しく、自分の課題が見えました。他の皆さんの料理を見る中で、今後も日々精進したいと感じました。また挑戦し、来年は納得のいく作品をつくりたいです」

 

表彰式では3名の審査員が講評を行った。

 

全国日本調理技能士会連合会理事長 木浦信敏氏は

「優勝した大草さんは、50分で各料理を仕上げることを何度も練習しただろうと思わせる出来ばえで、課題とされているポイントを理解していました。短い時間の中で味もクリアに仕上げ、高い評価を得ていました。このような素晴らしいコンクールがあるのは広島だけ。他の参加者の皆さんも含め、これから日本料理界を背負って立つんだ、という気持ちで今後も頑張って欲しいと思います」

 

広島県日本調理技能士会会長 川村満氏は

「今回は調理経験1年目の選手から20年目の選手まで幅広く、経験がまだ浅い人は参加することに勇気が必要だったと思いますが、参加することに意義があります。今回優勝した大草さんも、同コンクールの参加はこれで5回目。最初は賞を取れませんでしたが、今回は満場一致での優勝でした。これからも、皆さんのような若手が広島の食の魅力を盛り上げて欲しいと思います」と話した。

 

「日本料理喜多丘」主人・北岡三千男氏は

「調理経験1年目と10年目以上では差があるのは当然ですが、年々、参加者の全体的なレベルが上がっているように感じています。日本料理は細かい技術が多く、毎回1品作るごとに“何が悪かったのか?どうしたらもっと良くなるのか”という振り返りと繰り返し調理することが大切。50年料理を作り続けている私も同じ思いです。こうしたコンクールに参加するだけでも意義があると思うので今後も参加し、研鑽を積んで欲しいと思います」

 

 

約11年前に同コンクールを発起した湯﨑英彦知事は、表彰式において「広島県の魅力的な農産物、畜産物は皆さんのようなプロが調理してこそ活き、そうした作品を国内外、県内外から食べに来てもらっていい循環が生まれる。これからもすばらしい料理を作っていただきたい」と締め括った。

この他、審査員の加藤氏は「この1年、練習をつづけ昨年のコンクールよりも成長している子もおり、進化を感じて驚きました。年々レベルが上がっていると思います」

審査員の下原氏は「2〜3年前から課題1と課題2は同じ。それぞれの課題で見られるポイントや逆に減点対象になることはわかるはず。こうしたことをそれぞれの親方が教えることも大切。厨房審査では技術や衛生面なども見ているが、結局料理人は喰い味が大切なので、40歳以下の若い人はまだ自分の味が定まっていないこともあるかと思うが、その辺を意識して日々修行するといいと思います」と話した。

 

これまで50名以上の優秀な料理人を輩出してきた同コンクール。来年も開催予定であり、

今後も若手の発掘・育成を続け「おいしい!広島」を料理人らと共創する意向だ。

 

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