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広島の蔵元の中でも屈指の極軟水 伝統の軟水醸造法により醸すやさしくも強さのある酒 – 盛川酒造

広島の酒

[投稿日]2021年03月17日 / [最終更新日]2021/03/22

瀬戸内海国立公園に指定されている野呂山(呉市安浦町)の東側麓にある蔵元が、盛川酒造株式会社です。
標高839メートルの野呂山を源流とする野呂川は、夏には蛍が舞う清流。野呂川のほとりにある盛川酒造には、野呂山系の伏流水と同じ良質の水が蔵内の地下80メートルから湧き出しています。
しかも、水質は軟水地帯の広島県内でも希少な極軟水。
この極軟水を蔵内から汲み上げ、日本酒の仕込み水として使っている盛川酒造では、広島杜氏伝統の軟水醸造法で、麴をしっかりと作り、米の味を引きだす酒造りをしています。
盛川酒造は、1887(明治20)年の創業。七代目の蔵元である盛川知則社長と、その弟の盛川元晴杜氏の兄弟蔵。
日本酒造りに軟水は不利といわれてきました。なぜなら、酒造りには不可欠な酵母の発酵を促すミネラルが軟水には少ないからです。ミネラル不足では酵母の発酵が緩慢になり、醪(もろみ)をしっかり発酵させることが難しいのです。
ミネラル不足という軟水の弱点を麹の働きで補うことで克服したのが、軟水醸造法です。時間をかけて麹菌を蒸米の内部までゆきわたらせ、酵母の発酵に必要な栄養分が少しずつ溶け出るようにして、軟水でもしっかりと発酵する旨い日本酒が醸せる技術として広島の杜氏の間に普及していきました。
盛川酒造の井戸に湧くのは広島県内でも一、二を争う極軟水。広島杜氏伝統の軟水醸造法を継承し、極軟水による酒造りに挑んでいるのが元晴杜氏です。

「水の性格が酒の性格に反映される」と、元晴杜氏は言います。
極軟水だから弱い水というわけではなく、むしろ盛川酒造の水には強さを感じるのだとか。
「冷酒から燗酒まで温度帯が変わっても、時間を経て熟成しても、変わらずおいしく飲めるのは水に強さがあるからでしょう」。
一方、酒米については、
「同じ品種でも年によって性格が違います。ですから、吸水、蒸米の過程で米の状態をつかみ、できた麹の性格を把握したうえで糖化と発酵のスピードを調整します。自分がイメージする酒になるように、造りながら整えていくのです」と元晴杜氏。
こうして盛川酒造では、極軟水の持ち味を生かしつつ、米のうま味をしっかりと引き出すことで、仕込み水の性質のごとく「やさしさの中に強さのある」日本酒が醸されます。
創業以来、盛川酒造が追求してきたのは「汲むほどに味も香りも深き酒」。
芳醇で味わいの深いお酒は派手さはなくとも口当たりが柔らかく、飲み飽きしません。料理に寄り添い、それでいて知らず知らずのうちに盃が進む食中酒にこだわり続けています。

くつろいで飲む「白鴻」と晴れの日を彩る「沙羅双樹」

盛川酒造の代表銘柄は「白鴻(はくこう)」と「沙羅双樹(さらそうじゅ)」です。
この2銘柄の特長を洋服に例えるならば、「白鴻」がカジュアルな普段着で、「沙羅双樹」は特別な日を迎えるための晴れ着でしょうか。
くつろいだ気分で、毎日の晩酌に家庭料理とともに楽しむ純米酒中心のラインナップが「白鴻」、特別な日に華やいだ気持ちで飲む吟醸造りを主とするのが「沙羅双樹」です。「沙羅双樹」には全量、山田錦の原産地である兵庫県屈指の特A地区産の山田錦(特等以上)を使用しています。厳選した酒米を磨きあげて使った、晴れの日にふさわしいお酒です。

海外で選ばれる日本酒を目指して


盛川酒造が海外へのアプローチを始めたのは、知則社長が先代から蔵を引き継いだ1989(平成元)年にさかのぼります。
「日本酒を通じて、日本文化を海外へ伝えたい」という志で、急逝した先代の跡を継いだ知則社長ですが、当時、海外への販売ルートはゼロ。ハワイで働いた自身の経験から、手始めにアメリカへのアプローチを試みましたが、当時はまだ小さな酒蔵が独自で日本酒を輸出する術もなく、大手企業でなければ太刀打ちできない状況でした。それから20年後の2009年、台湾へ「白鴻」を初めて海外輸出して以来、試行錯誤を重ねた末、現在では、香港、フランス、カナダ、イギリス、中国へと販路を開拓してきました。
海外に進出する蔵元が増える中、盛川酒造では“選ばれる酒”になるための工夫として、ブルーのボトルに「白鴻」と吉野杉の木札に焼き印を押し、その木札を付けたオリジナル商品を企画しました。透明感のあるブルーのボトルは、それだけで目を引くうえ、グラスに注いだお酒に木札を浸してマドラーのようにかき混ぜると、吉野杉の香りが立ち、樽酒のような味わいに変化します。目でも舌でも楽しめるこの演出は、海外で大いに注目を集めています。
また、フランスでは、盛川酒造の日本酒を気に入ったミシュランの星付きレストランから、酒粕を料理に使いたいという依頼が舞い込みました。酒粕自体はもろみからお酒を搾ったあとの副産物ですが、良質な酒米を使っていることから料理をおいしくする高いポテンシャがあります。
このことがきっかけとなり、盛川酒造では広島県食品工業センターが開発した技術を利用して、純米吟醸粕を料理に使いやすくなめらかに加工した「酒粕ペースト」として販売もしています。
「白鴻 酒粕ペースト」の商品ページはこちらから

希望を抱いて大空に舞う純白のごとく世界へ

盛川酒造の日本酒で近年、海外での評価が高まっているのが「白鴻 四段仕込み純米酒(赤ラベル)」です。
日本酒の仕込みは通常、3回に分けて蒸米・米麹・水を加えて、徐々にもろみの量を増やしていく三段仕込みです。この搾る直前のもろみに米・米麹でつくった甘酒を加えて、四段仕込みにしたのが赤ラベルの特長です。この「甘酒四段」により、お酒に程よい甘さとうま味が残ります。
こうして造られた「赤ラベル」のお酒は、冷酒で飲むと白ワインのように感じ、お燗にすると肉じゃが、すき焼き、おでんなどに合います。
この赤ラベルは、「インターナショナルワインチャレンジ(IWC)2014」の純米酒の部でゴールドメダルをはじめとする複数のメダルを、さらに「Kura Master 2019 」でプラチナメダルを受賞しています。
「白鴻 四段仕込み純米酒 赤ラベル」の商品ページはこちらから
純米酒では盛川酒造を代表する「白鴻 特別純米酒60 緑ラベル」が「Kura Master 2019」 でゴールドメダルに輝いています。
緑ラベルは、メロンを思わせるほのかな香りがあり、口に含むと軽く米のうま味を感じるお酒です。また、キレのあるのど越しのスッキリとした辛口の後味が特長で、シーフードやお寿司との相性が良く、冷酒から燗まで、好みの温度で楽しめるおオールマイティなお酒です。
「白鴻 特別純米酒60 緑ラベル」の商品ページはこちらから
「沙羅双樹」も負けてはいません。「沙羅双樹 白鴻 純米大吟醸40」の「沙羅双樹 白鴻 純米大吟醸50」はともに「Kura Master 2017」で金賞を受賞しています。
「沙羅双樹 白鴻 純米大吟醸40」の商品ページはこちらから
「沙羅双樹 白鴻 純米大吟醸50」の商品ページはこちらから
盛川酒造の日本酒は着々と海外で認められています。酒銘の「白鴻(はくこう)」は、白い大きな鳥の総称。純白の鳥が大きな希望を抱いて大空を舞い上がってゆく気概に満ちた様は、ラベルのマークに象徴的に描かれていますが、同じ思いを盛川酒造も世界に向けて抱き、羽ばたいてゆくことでしょう。


盛川酒造株式会社
1887(明治20)年 創業
呉市安浦町原畑44
https://morikawa-shuzo.com/

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