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広島の和食界における若手の登竜門 「第7回ひろしま和食料理人コンクール」

広島食道

[投稿日]2022年03月22日

北ではリンゴが採れ、南では柑橘類が実るため、農業において「広島県は日本の縮図」とも言われる。豊富な耕作物に加え、穏やかな瀬戸内海で育まれる海産物も充実しているその様は、まさに食材の宝庫だ。

県ではこれらの食材を地域の貴重な観光資源とみなし、さらにこの食材を使って卓越した一皿を生み出す料理人たちを“広島の財産”だと考えている。

2022年に第7回を迎える「ひろしま和食料理人コンクール」は、広島和食界若手のための登竜門として在り続けてきた。例年、優勝した料理人には国内外で腕を磨く修業の場が特典として与えられ、各種イベントにも多数招待される。

これまでも宮島・大聖院で行われた美食晩餐会や、メキシコ・グナファト州で開催された国際フードフェスティバルへと招かれ、その技を存分に発揮してきた。

今回もまた、各地で活躍する先輩料理人たちの背中を追いかけ6名の選手がエントリー。書類審査、面接審査を経て、コンクールへと臨んだ。

<出場選手>

1 株式会社なだ万  大草 茂   (おおくさ しげる)

2 村上水軍     大宮 剛一  (おおみや こういち)

3 株式会社かなわ  中島 洋介  (なかしま ようすけ)

4 株式会社白竜湖  花谷 卓哉  (はなたに たくや)

5 株式会社魚池   藤井 宏規  (ふじい こうき)

6 株式会社半べえ  村上 夏輝  (むらかみ なつき)

参加動機には「自身の力を試したい」「より技術を向上させたい」といった、力強い言葉が並ぶ。中には過去数回出場したという選手も存在し、同コンクールにかける思いの強さが感じられた。

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若手料理人たちの闘いを見守りジャッジを下すのは、広島の和食業界を牽引してきた名だたる料理人の面々。さらに日本料理界の重鎮や著名な料理評論家が顔を並べ、新たな才能に出合えることに期待を寄せた。

      

一般社団法人全国日本調理技能士会連合会   日本料理喜多丘 北岡三千男      料理評論家 山本益博

理事長 木浦信敏

      

 半べえ 川村 満          かなわ 戸田 豊          稲茶 下原 一晃

審査員たちからは、「自分のため、店のため、そして広島県のために力いっぱい頑張ってほしい」というエールや、「限られた材料と限られた時間の中で、どこまで自分の技を出せるか。普段の実力がはっきりとあらわれると思う」などの鋭い指摘があがった。また、「これだけのコンクールを地方で開催するのは本当に意義のあること。担い手が少なくなっている日本料理界が盛り上がるきっかけになってほしい」という声も寄せられた。

審査対象になる課題は3つ。先付、椀物、自由課題が与えられ、それぞれ60~80分間の調理時間で完成させる。ひとつの課題が終了するごとに実食審査が行われ、最後にプレゼンを経て総合審査となる。もちろん調理中も審査の対象で、食材の扱い方、調理の腕、片付けの手際の良さなど、すべてがチェックされる。

食材と格闘する選手たちの姿は真剣そのもので、それを見守る審査員たちの目もまた、温かくも厳しい。審査員の一人は、「今回参加している選手は二十代と三十代が半々くらい。三十代といえば、すでに独り立ちして店を構えていてもおかしくないくらい経験を積んでいる年代。ハイレベルな闘いになるのでは」と話してくれた。

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今回の課題食材は、穴子、広島レモン、小松菜、大根、真鯛、日本酒の6つ。前者4つに関しては課題1の先付に用いること、後者2つに関してはどの課題に使ってもOKというルールが定められている。

審査ポイントは調理技術、時間配分、味、盛り付けなど多岐にわたるが、料理に関しては自然の美しさを表現すること、広島食材を生かすことが重要となってくる。中でもSDGsの観点から“食材を無駄なく利用すること”があげられており、一匹丸々の真鯛をどう処理するかに注目が集まった。

午前9時40分からスタートし、約4時間かけて行われた調理と実食審査が終了。選手たちの精魂込めた品々がすべて会場へと出そろった。

 

1 大草茂

先附 :小松菜と海老の柑橘おろし和え・真鯛の揚げだしチリソースあん・煮穴子サンドオタフクソース味

椀物 :真鯛と浅利の和と洋感じる御吸物

自由作品:真鯛の塩釜焼 塩辛ソース

2 大宮剛一

先附 :カキの山椒煮・広島赤鶏のレモン焼・穴子のぬた

椀物 :あこうの真丈,潮仕立

自由作品:真鯛の唐寿美揚げ

3 中島洋介

先附 :先附三種盛 かきくわ焼きクレソン[レモン釜]・穴子油浸し大根小松菜・鯛てまりずし

椀物 :鯛のうしお汁

自由作品:あこう揚煮

4 花谷卓哉

先附 :小松菜と穴子のロール揚げ・赤鶏の塩麴焼き・大根とスモークサーモンの鳴門巻き

椀物 :焼鯛と菜の花の煮麺潮汁

自由作品:3種の広島食材真鯛包み揚げ

5 藤井宏規

先附 :鯛のレモン酢じめ 漬け卵黄 ウロコチップがけ・穴子と小松菜のおひたし・穴子のだし巻き

椀物 :鯛の潮仕立て

自由作品:鯛の塩釜焼き

6 村上夏輝

先附 :真鯛広島レモン糀若葉焼・煮穴子導明寺櫻蒸し・揚大根 揚小松菜

椀物 :鯛潮仕立て

自由作品:牡蠣金山寺焼き,春うらうら野菜

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審査員たちからは、「お出汁が引けていないものが多く、鯛の身も皮もきちんと生かし切れていない。コンクールなので張り切るのはわかるが、小手先の盛り付けに気をとられ、基本がおろそかになっているように感じる」という厳しい声や、逆に「個性があらわれやすい自由課題は比較的まとまっているものが多い。野菜の処理もあの時間内にきちんと行えている」というような、評価する声も寄せられた。

 

その後、選手たちが一人ずつ審査員の前で思いを話すプレゼン審査へ。緊張を抑えつつも、調理のポイントや出場にあたってどのような努力を重ねたか、このコンクールにかける思いなどを熱弁した。

中には前年出場して受賞を逃すも、その時感じた反省点を生かして料理に反映させたという選手や、「コロナの影響で調理場を離れなければいけなくなったが、今回のコンクール出場が決まって久々に包丁を握り、やはり自分は料理が好きだと気付けた」と話してくれた選手もいた。

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調理、実食、プレゼンのすべてを終え、いよいよ最後は結果発表。表彰式にあたり、審査員の木浦信敏さん(全国日本調理技術技能士会連合会理事長)と山本益博さん(料理評論家)から講評をいただいた。

「新型コロナウイルス感染拡大が収まらない中で、飲食業界、観光業界は大きな打撃を受けている。そんな中で料理の世界から離れることなく一生懸命努力し、このような場に参加してくれることをとても嬉しく思う。良かったことは、そんな皆さんの懸命な姿が見られたこと。残念だった点は、お出汁の引き方に集中力が欠けていたこと。これからは自分たちが和食料理界を背負っていくんだという気持ちで、研鑽を積んでいってほしい」(木浦)

 

「私は“食べ手”の立場から一言。昨年も伝えたが、和食には“わんさしが華”という言葉がある。包丁を入れた瞬間に切り身から見事な料理に昇華する刺身、お出汁という真髄が詰まった椀物は和食の要。とくに椀物は今まで数え切れないほど口にしたが、心から美味しいと感じたお椀は10回ほどしかない。逆さ箸でいただくのは非常に失礼だとわかってはいるが、その時だけは心の中で“神様ごめんなさい”と謝って逆さ箸でお椀をいただく。ほかの料理を食べた後の箸で、料理人が魂込めて作った椀物をいただく気にはなれないから。それくらいの気持ちで味わう椀物を、どうか選手の皆さんも気合いを入れて作ってほしい。食材に敬意を払い、本当に美味しいものをたくさん食べて“アタリの味”を覚え、一発で決められるような努力を重ねてほしいと思う」(山本)

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心のこもった講評をいただき、この日健闘した6名の選手たちの中から入賞した3名の選手の名前が読み上げられた。受賞者たちの喜びの声を、以下に紹介したい。

優勝 藤井宏規さん(株式会社魚池)

「昨年も参加させていただき、惜しくも3位という結果だった。今年は必ず優勝するという気持ちで臨んだが、実際に賞を手にすると自分はまだまだこの賞に見合えるだけの料理人ではないという気持ちになった。勤めている店の社長は、同コンクール第1回目の優勝者であり、先輩もまた第5回目の優勝者。自分のすぐそばにまだまだ越えられない壁があるので、まずは日々の仕事の中で努力を続けていきたい」

2位 大草茂さん(株式会社なだ万)

「食の仕事に就きたいと小さい頃から思っていたくらい、食べることが好き。料理長にすすめられて今回出場したが、コロナ禍で仕事の機会が奪われる中、自宅でYouTubeを視聴して数ある料理人の動画から技術を学んだ。かなり著名な料理人も動画をアップしていて学ぶところが随分あった。今回、自分の足りないところに気付くことができた一方で、そういった日々の練習の成果が評価されたのならとても嬉しい」

3位 村上夏輝さん(株式会社半べえ)

「昨年出場した際、時間オーバーという失態をしてしまい、悔しかったのと同時に“店の顔に泥を塗ってしまった”という自責の思いでいっぱいになった。今回受賞できて少しホッとしている。また、先ほど審査員の方たちの講評を聞き、自分はまだまだだなと感じた。今後は調理の技術だけでなく、数多の食材が育つ環境や、その土地が持つ歴史、文化という背景まで深く勉強していきたいと思う」

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受賞した選手たちの喜びが溢れる中、受賞を逃した選手たちもまた、それぞれの思いをかみしめていた。ある選手は自身の料理について審査員にアドバイスを求め、ある選手は別の選手と感想を述べ合ったりしていた。

「受賞したのは、自分よりも若い料理人たちばかり。悔しいけれど、その悔しさが味わえたことが何より収穫だったかもしれない」

「昨年も出場して受賞を逃し、“もう出場しない”と思うくらい悔しかった。今回もまた同じ気持ちになっているけれど、きっとまた、コンクールの時期が近づくと調理台に向かうんだと思う」

日々の努力、その後に訪れる喜びと悔しさ…

コンクールを経て、一回りも二回りも成長した選手たちが、いつかきっと“広島の財産”となってくれることを大いに期待したい。

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