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日本で初めて「貴醸酒」を醸造した広島の「島の蔵」 – 榎酒造

広島の酒

[投稿日]2020年11月03日 / [最終更新日]2021/03/22

水の代わりに日本酒で醸す「貴醸酒(きじょうしゅ)」の蔵として知られる榎(えのき)酒造。
広島県の南西部、倉橋島の音戸町にある“島の蔵”の1つです。

通常、日本酒は、麹、米、水を3回にわけて投入する「三段仕込み」で造られます。一方、貴醸酒は、三段仕込みの3回目の段階「留添え(とめぞ・え)」で、水の代わりに日本酒で仕込むのが特徴。
水ではなく日本酒で仕込むことで発酵が緩やかに進み、貴腐(きふ)ワインにも似たとろりと甘く濃厚なお酒になります。
チャレンジ精神旺盛な榎徹会長が興味を持ち、全国に先駆けて 1974(昭和49)年に醸造し、製品化。榎酒造では、仕込み水の代わりに純米酒を使用し、仕込んでから8年熟成させた「貴醸酒8年貯蔵」が定番です。

<貴醸酒8年貯蔵の商品ページはこちらから>
ほかにも新酒、にごり酒、古酒とさまざまな貴醸酒をラインナップしています。
貴醸酒8年貯蔵は琥珀色をしていますが、できたての生にごり酒は白色で、新酒は透明。種類や熟成期間による色や味わいの違いが楽しめます。
「日本酒でありながら日本酒とは異なる香味を持つ貴醸酒は、古酒になじみがある海外の方が受け入れられやすかったようです」と、榎酒造四代目の榎俊宏社長。

というのも、榎会長が製品化した当初こそ、新しく珍しい日本酒として注目されたものの、翌年増産したところ、ぱたりと売れ行きが減ってしまったのです。色の濃い甘いお酒は、辛口の普通酒が全盛の当時の日本では取り扱ってくれる酒販店も少なかったそう。
それでもめげずにトライ&エラーを繰り返し、毎年、貴醸酒を造り続けたところ、仕込んでから8年熟成させると、エキス分をたっぷりと含んだお酒が歳月を経て、濃醇でまろやかな味わいになることが分かりました。
その日本酒らしからぬ個性的な味わいに注目が集まったのは、日本国内よりも海外でした。
世界最大規模のワイン品評会 IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)*で、榎酒造の貴醸酒は、2008年の初受賞以来、2010年から2016年まで連続で、そして2019年と通算9度、SAKE部門古酒の部で金賞を受賞。2010年には、古酒部門のもっとも優れている酒「チャンピオン・サケ」にも選ばれています。
    *IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)
 毎年、ロンドンで開催される、世界的に影響力のあるワインコンペティション。2007年に日本酒の「SAKE」部門が開設された。
「貴醸酒ははっきりした分かりやすさがあり、海外ではなじみのある味なのだと思います。フォアグラやジビエ料理、チーズなど、こってりとした食材との相性がいいです。マディラ酒のように食後のデザート酒にしてもいいですし、バニラアイスクリームにかけても楽しめますよ」と榎社長の姉、榎真理子さん。真理子さんはフランスで11年間仕事をした後、2000年に帰国。以来、榎社長を事務方として支え、広報活動などを担っています。

榎酒造の貴醸酒は多彩

白麹を使いクエン酸をたっぷり含んだ白ワインのような味わいの「さわやか貴醸酒 華colombe 〜白麹混合仕込み〜」。
https://hanahato.ocnk.net/product/101
それをオーク樽に貯蔵した「さわやか貴醸酒オーク樽貯蔵」。
https://hanahato.ocnk.net/product/56
榎酒造で造るの中でもっとん歩甘い「六段仕込み 超濃厚貴醸酒」。
https://hanahato.ocnk.net/product/133
そして、創業120周年記念のスペシャルな貴醸酒として、1980年に仕込んだ30年熟成の貴醸酒も。日本酒の枠を超えた個性派ぞろいで、自分好みの貴醸酒を探す楽しみがあります。

吟醸酒から貴醸酒まで多種の日本酒を手掛ける


平清盛が沈む太陽を扇で止め、一日で開削したという伝説の地、音戸の瀬戸の近くに榎酒造はあります。メインの銘柄は「華鳩」ですが、1899(明治32)年の創業時の銘柄は「清盛」でした。
蔵内の井戸からくみ上げられる中軟水を仕込み水に、貴醸酒以外にも吟醸酒から普通酒まで、守備範囲広く多種の日本酒を造っており、会長譲りのチャレンジ精神が作り手にも受け継がれ、酒造りに反映されています。
「新しいことをやりたいというDNAがあるんでしょうね。新しい酵母を使った酒造りにもいろいろと挑戦してきましたが、試行錯誤の末、原点に返ろうと熊本酵母協会9号に切り替えてから、派手さはありませんが、昔ながらの優しい味の酒になっています」と榎社長。
目指すのは、安心して飲み続けられる「ホッとやすらぐお酒」。藤田杜氏、蔵人、榎社長の3人体制で、人の手、人の力を使い、人の知恵と工夫で丹念に醸される榎酒造の日本酒は、全国新酒鑑評会で金賞受賞歴16回を数える確かな技術に裏打ちされています。
3年前から 杜氏自ら音戸町内で米作りを開始。昨年からは榎社長も仲間入りしました。田の草刈りなど仕事は増えたものの、自分たちで作ると気持ちが入るので、愛着がわくとも。
榎酒造では原料米には、広島県産の八反錦を中心に使用していますが、杜氏自ら作ったお米を麹米に、掛米には音戸町産の米を使った100%音戸産の純米酒「わいわい村のお酒」もあります。水ばかりではなく米も地元産を使った酒造りが始まったというわけです。
常に新しいチャレンジを続ける榎酒造。さあ、次はどんな挑戦をしていくのでしょうか。目が離せません。
 


榎酒造株式会社
1899(明治32)年 創業
呉市音戸町南隠渡2-1-15
URL :http://www.hanahato.co.jp

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