広島食道 - 広島魅力向上を食で発信するプロジェクト - > 記事 > 全国で最初に認められた竹原の蔵元の純米酒は100年の時を経て、世界へ羽ばたく – 藤井酒造

全国で最初に認められた竹原の蔵元の純米酒は100年の時を経て、世界へ羽ばたく – 藤井酒造

広島の酒

[投稿日]2021年03月09日 / [最終更新日]2021/03/22

1907(明治40)年に、日本で初めて開催された全国清酒品評会で最優秀第一位を受賞した蔵元があります。それが、竹原市にある藤井酒造株式会社です。
この受賞の知らせは、酒どころとして全国的に知られる灘(兵庫県)、伏見(京都府)の酒を押さえて、広島の日本酒が全国に名を馳せるきっかけとなりました。同時に、三浦仙三郎が確立した軟水醸造法により醸された広島の日本酒が認められた瞬間でもありました。
藤井酒造は、江戸時代末期の1863(文久3)年に創業。創業銘柄「龍勢(りゅうせい)」は、龍頭山の麓の井戸水で醸したところ勢いの良い酒が出来たことから命名されました。
この銘柄の由来にある通り、竹原は豊かな地下水に恵まれた地です。瀬戸内海ならではの少雨温暖な気候は暑すぎず寒すぎず清涼な空気に満ちた環境として、日本酒づくりに最適な土地柄です。江戸時代前期には酒造業が栄え、26軒もの蔵元があったといいます。

酒は人が造るものではなく、自然が醸すもの。ゆだね、さずかる酒造り

藤井酒造は全量酒造好適米のみを用い、すべての日本酒を米と米麹、水のみで醸す純米造りの蔵元です。初代の藤井善七から数えて五代目として蔵を継承するのが藤井善文社長、そして、酒造りを担うのは弟の藤井雅夫杜氏です。
藤井酒造が特に力を入れているのが生酛(きもと)仕込の日本酒です。
米、米麹、水を混ぜ合わせた桶で乳酸菌などの有用な菌が働き、最終的に蔵付きの酵母によって醸されてゆくのをじっくりと待つ──。
「生酛仕込みは自然との対話」と、藤井社長は言います。
続けて「酒は授かりもの。自然に任せ、無理をしないこと。良い酒になるように見守りながら、手を加えていく、という点では子どもを育てるのに似ていますね」と、人間の都合ではなく米や水、もろみの状態に人間を合わせること、素材に素直に向き合うことを大切にしてきました。
酒造りにおいて、人の仕事は乳酸菌が入る環境をつくり、蔵酵母が住み着くのを待つことです。蔵付き酵母で醸す酒は、その年の気候や風土を反映します。自然に任せるからこそ、同じ銘柄でも醸造年度ごとに変化があり、決して画一的な造りにならないところが、生酛仕込みの難しさであり、醍醐味と言えるでしょう。
飲み手にとっては、その変化が楽しみ、かつ魅力なのです。

1世紀を経て、日本だけでなく世界に評価される日本酒へ

藤井酒造が第1回の全国清酒品評会で最優秀第一位を受賞してから1世紀後、フラッグシップである「龍勢 黒ラベル 純米大吟醸」は海外に認められました。
2007年にロンドンで開催されたインターナショナル・ワイン・チャレンジ (IWC)での純米吟醸酒・純米大吟醸酒部門での最高金賞です。
IWCは世界最大規模・最高権威に評価されるワイン・コンペティションで、世界中のワイン業者から注目されています。2007年に「SAKE部門」が本格的に設けられてから、初の受賞を藤井酒造が果たしたのです。
龍勢 黒ラベル 純米大吟醸」の商品ページはこちらから
その10年後の2017年には、フランスで行うフランス人のための日本酒コンクールとして初めて開催された「Kura Master」の純米部門で「龍勢 純米吟醸 白ラベル」が、プラチナ賞を受賞。全国清酒品評会で最優秀賞を受賞してから実に110年後、手にした海外での栄誉でした。
「龍勢 純米吟醸 白ラベル」の商品ページはこちらから
さらに、2020年には、フランスで開催される国際酒類コンペ「フェミナリーズ世界ワインコンクール」の純米酒部門で「龍勢 生酛備前雄町」と「龍勢 備前雄町 特別純米酒」が金賞を受賞。14回目を迎える同コンペに日本酒部門が増設されて、初の受賞です。
「龍勢 生酛備前雄町」の商品ページはこちらから
「龍勢 備前雄町 特別純米酒」の商品ページはこちらから

上記のいずれも世界的に権威のあるコンペティションですが、藤井酒造は日本酒部門開設の年には必ず主要な賞を受賞しています。特に直近の「フェミナリーズ世界ワインコンクール」は、その名の通り、審査員は全て女性です。ワインの本場フランスでTOP5に入る世界的知名度の高いコンクールで、ソムリエ、醸造家、ジャーナリスト、インポーター、シェフなど、約600名による厳正な審査・評価がなされました。
藤井酒造の日本酒の特長は、天然の酵母たちの働きで、米の旨味と良質な酸がしっかりと絡み合い、きれいな味わいになることです。
酸が複雑で厚みがあるので、冷やすと甘さが抑えられ、より一層おいしく味わえるのは、ワインに通じるものがあります。フェミナリーズ世界ワインコンクールでの金賞受賞は、自然の力に委ねて醸す藤井酒造の純米酒が、経験豊かなワインのプロフェッショナルたちからも支持される日本酒であることの証と言えるでしょう。

食、酒器、ふれあいを通して日本酒のすばらしさを伝えたい

藤井社長
季節や日本酒の熟度によって、お酒の表情の変化を味わう──そんな楽しみ方ができるのが藤井酒造の日本酒です。
例えば、フレッシュな新酒を冷やして新鮮な魚介類や野菜料理に合わせたり、冷奴には醤油の代わりに「たけはらの塩」で、生酛の冷酒を合わせます。一方で、熟成した生酛をお燗にしてチーズや肉料理に合わせたり、鯛味噌とともに味わうのもおすすめです。
また、日本酒の味わい方は料理との組み合わせだけにとどまりません。
冷酒、燗酒などお酒の飲み方によって酒器を変えることで、味わいが変わります。冷酒を飲むグラスも江戸切子、錫張、ワイングラスなど、その形状によって味わいが変わるのが日本酒の不思議であり魅力です。
お酒そのものの味だけでなく、どんな料理と合うのか、どんな酒器で飲むとよいかなど、話題が多彩、多様に広がっていくのも日本酒ならではといえるでしょう。
こうしたお酒を介したコミュニケーションを通して、きちんと日本酒のすばらしさを伝えていきたい、と藤井社長は言います。藤井酒造ファンとの交流・親睦を深めるために結成した「善七で楽しむ会」の活動もその一つです。

量産も、機械化、移転を拒み、竹原とともに


江戸時代に製塩業で栄えた竹原。その名残を今に伝える町並みは、安芸の小京都と呼ばれています。保存地区の一部をなす本町通西側の通り沿いにある酒造交流館は、藤井酒造創業時からの蔵の一部を改装し、古い酒造具などを展示して活用。蔵出し生原酒など、季節限定の商品を販売するほか、酒粕や酒関連のオリジナルグッズ、器や酒器なども販売しており、竹原の観光スポットの一つになっています。
温故知新の取り組みとしては、大正時代から蔵に伝わる木桶を復活させ、酒造りに使っています。1963(昭和38)年から50年もの間、不使用のまま蔵に眠っていたにもかかわらず、確かな職人の技術で作られた木桶は痛みも不具合もなく、現役復帰しています。
竹原の地で150年余り、量産しない、機械化しない、移転しないことを頑なまでに守り、日本酒をつくり続けてきた藤井酒造。
日本酒の伝統的な醸造技術を継承しながら、日本酒の本質的な素晴らしさを追求する姿勢はこれからも変わりません。
蔵元としての歴史を財産に、その価値をさらに高め、広げていくことでしょう。
 


藤井酒造株式会社
1863(文久3)年 創業
竹原市本町3-4-14
http://www.fujiishuzou.com/

RECOMMEND

TOPへ戻る