
フランスの東部、ブルゴーニュ地方の特産品といえばワイン。ボルドーと並び、フランスを代表する産地です。ブルゴーニュは、ぶどう栽培からワイン醸造までを一貫して手掛ける「ドメーヌ」と呼ばれる作り手が多いのが特徴。生産エリアは区画・畑ごとに細分化されており、それぞれのテロワールを反映したワイン造りが行われています。
世界のワイン愛好家が憧れるブルゴーニュのノウハウを学ぼうと、広島県は令和2年3月、ブルゴーニュ・ジュラ地方の独立系ワイン生産者組合「ブルゴーニュ・ジュラ地方連盟」と基本合意書を締結。行政レベルでは初となる取組です。
■ワイン即売会「Salon des vin Dijon」に日本酒として初出展!
10月14日~16日、ディジョンで開催されたワイン即売会「Salon des vin Dijon」に初出展し、三宅本店、盛川酒造、賀茂泉酒造、藤井酒造、馬上酒造の5蔵が県産日本酒をPRしました。
独立系のワイン生産者が開催するワイン即売会「Salon des vin」は1976年にパリで始まり、現在ではフランスの9つの都市で開催されています。ディジョンでの開催は今年で19回目。毎年7,000人を超える来場者で賑わう、多くのワイン愛好家から親しまれているイベントです。この歴史あるワイン即売会に、ワイン以外のアルコール飲料が出展されるのは史上初めてのこと。現地でも「歴史的な出来事だ」と大きな話題になりました。
舌の肥えたワイン好きが集まるイベントで、日本酒は受け入れられるのか、またどのような評価を得るのか、期待と緊張の中で参加。そんな不安を吹き飛ばすように、たくさんの来場者が日本酒ブースに足を運び、試飲を楽しんでいました。
初めて日本酒を飲んだ男性は「思っていたよりもずっとバランスが良い」と驚き、また梅酒を口にした女性は「さわやかな酸味があってフランスにはない味」と話し、販売店をチェックされていました。
ワイン即売会の初日には、M.O.F.ソムリエのフィリップ・トルサール氏による日本酒×フロマージュセミナーを実施。同じ発酵食品である日本酒とチーズは、一緒に食べるとアミノ酸による相乗効果で旨みが増大。参加者は「チーズと一緒に口に含んだときの味わいがとても素晴らしい」と話していました。
≪三宅本店 三宅清嗣社長≫
日本酒と中国の白酒との違いや精米歩合などの日本酒に関する知識が、まだまだ地方都市には浸透していないことが分かった。一方で、日本酒をおいしく試飲していただいている方が多かったので、ブルゴーニュでも通用する味なのだと確信が持てた。
■ワイン醸造家との交流を促進/ドメーヌ訪問
ワイン即売会への出展に先駆けて、ブルゴーニュ・ジュラ地方連盟会長のドメーヌ「カシャ・オキダン」を訪問し、施設やぶどう畑の見学と意見交換を行いました。
およそ46,000haのぶどう栽培面積と、年間約200万hlのワイン生産量を誇るブルゴーニュ地方。ボルドーでは「シャトー」と呼ばれる巨大なぶどう園を所有するワイン生産者が多いのに対し、ブルゴーニュには大きな単独所有のぶどう園はほとんどなく、畑を複数の生産者が区分所有しています。そして、この畑の細分化が、ブルゴーニュワインの特徴ともいえる「テロワール」と密接に結びついています。
テロワールとは、簡単に言うと“ぶどうの樹が植えられ育つ場所”ですが、地勢や土質、小石の混ざり具合、傾斜、日照、水はけなど、自然の本質的な条件と深く結びついており、ブルゴーニュワインの醸造家は、高度な栽培学や醸造学などに基づく技術知見に加え、テロワールの個性に寄り添い、ワイン造りを行っているのです。
≪藤井酒造 藤井義大専務≫
ブルゴーニュの生産者との交流を通じて、いかにテロワールを意識した醸造を行っているかを感じた。日本酒にはテロワールの概念はないが、地域に根づいた産業という点では共感することが多かった。
今年は約1週間に渡り、ブルゴーニュ地方でのプロモーションを展開。地方都市でも日本酒が通用するという確かな手ごたえを感じました。
また、テロワールや環境に配慮したブルゴーニュのワイン造りの哲学は、蔵元の皆さんにとっても大きな学びになった様子。三宅社長は「自国の若者の国酒離れという共通の課題を抱えているので、お互いに刺激し合って前進していきたい」と意気込みを語りました。
今後も引き続き、食の発信地として注目を集めるブルゴーニュ地方を拠点として、ブルゴーニュ・ジュラ地方連盟との交流を通じて、醸造技術やブランディングのノウハウを学び合い、より良い酒造りに向けた連携を強めていきます!
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