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日本酒を搾る「上槽」から出荷するまで冷蔵保存する「貯蔵」 の過程と、そこで生まれる味わいの違いを知る

広島の酒

[投稿日]2021年03月12日 / [最終更新日]2021/03/30

発酵を終え、生まれたお酒を搾る工程を「上槽(じょうそう)」と言います。
その後、「滓引き(おりびき)」「濾過(ろか)」「火入れ」の工程を経て、瓶詰めして出荷されます。

1.上槽
生まれたての日本酒は白く濁っています。これを日本酒(液体)と酒粕(固体)に分離する工程が「上槽」です。上槽後に残るのが酒粕です。
上槽する時に目の粗い布やざるなどで簡単に濾しただけで、白濁した部分を残した酒が「 濁り酒」です。白色で甘みが残っていて、とろりとした舌触りが特長です。

お酒を搾る手法は大きく分けて3つあります。
①「袋吊り」
②「槽(ふな)がけ」
③「圧搾搾り」
です。手間のかかる搾り方ほど、日本酒の量も少なく、価格も高価になります。

上槽の主な方法

名称 方法 特長
袋吊り
(袋どり・雫取り)
醪を詰めた酒袋を一つ一つ小さなタンクの中に吊り下げ、自然にしたたり落ちるお酒だけを抽出する、とても贅沢な搾り方です。
搾ったお酒が酸化しないように斗瓶(とびん)と呼ばれる瓶に採集することから、袋吊りで搾った日本酒は「雫酒(しずくざけ)」「斗瓶囲い(とびんかこい)」と言います。
手作業のため、時間と手間がかかります。少量ずつしか搾れないため、大吟醸クラスの高級な日本酒に使われます。
圧力をかけていないので雑味が少なく、繊細でクリアな味わいです。
槽がけ(槽搾り) 槽(ふね)と呼ばれる長さ3メートルほどの船形の箱に醪を入れた袋を並べ、上から圧力をかけて搾る方法です。江戸時代からの伝統的な手法です。 やさしく絞るため、雑味の出ない味わいのお酒になります。
圧搾搾り 連続上槽機を用い、ゆっくり圧力をかけて一度に大量に搾る方法です。上槽機は大型のアコーディオンのような外観で、ヤブタ式と呼ばれるものが多くの酒蔵で使われています。高い圧力をかけて自動でスピーディーに搾ることができるので、搾ったお酒が酸化しにくいといわれます。 高圧で搾った酒粕は薄くて固い板状の「板粕」と呼ばれます。

上槽するタイミングで日本酒の種類を分け、特別な名称を付けて出荷することがあります。
一般的に次の3種の違いと呼び方があります。
①搾り始めて最初に出てくるお酒を集めて瓶詰した「あらばしり」
②次に出てくるお酒が「なかどり」
③最後に出てくるお酒が「せめ」
同じ原料や製法で醸した日本酒が、搾るタイミングの違いで味わいが変わるのも日本酒の奥深さです。

搾るタイミングによる種類と味わいの違い

名称 搾りのタイミング 特長
①あらばしり(荒走り・新走り) 醪を搾り始めて最初に出てくる酒です。 みずみずしい香り、軽やかな味わいが特長です。多少の濁りがあり、フレッシュ。アルコール度数もなかどり、せめよりも低いです。
②なかどり
(中取り・中汲み)
あらばしりの次に出てくる酒です。 お酒に透明感があり、香りや味わいとも最もバランスがとれた酒質です。
③せめ
(責め・攻め・後取り)
なかどりの後、最後に圧力をかけて醪を搾るときに出る酒です。 多少の雑味は入りますが、力強さと濃厚さが感じられます。アルコール度数はあらばしりやなかどりよりもや高めです。

2. 滓引き(おりびき)
上槽後、お酒に残る微量な成分を沈殿させるため、タンク内にしばらく置いておきます。このときできる沈殿物が「滓(おり)」で、うま味成分などを多く含みます。
しかし、滓を分離しないで長く放置しておくと酒質が変化し、お酒の味や香りが悪くなるので、沈殿した 滓を毎日一定量取り除く「滓引き」を行います。
この部分だけを抽出した「滓酒(おりざけ)」、滓部分を少し混ぜて薄白く濁った「滓がらみ」などがあります。

3. 濾過
滓引き後のお酒に残った細かい粒子を取り除くため、濾過機を使って濾過作業を行います。
活性炭素(かっせいたんそ)を使う場合もあります。活性炭の吸着性を利用して、お酒についている色や雑味を取り除きます。
濾過を行わない日本酒は「無濾過(むろか)」と表記されます。より搾ったままの状態に近く、フレッシュ感のある深い味わいで、アルコール度数も高めのお酒になります。

4.火入れ(1回目)
タンクや瓶に詰めた日本酒を60~65度くらいの温度で10分程度加熱する工程を「火入れ」と呼びます。熱湯の中に通すことで、お酒の中に残った酵素の働きを止めるとともに、火落ち菌と呼ばれる有害な微生物を殺菌します。

火入れをすることで、お酒の香味が調い、まろやかになりますが、火入れを行わない場合もあります。火入れを行わない酒を「生酒(なまざけ)」と言います。お酒の中に酵母菌が生きているので、冷蔵保存して管理をする必要があります。生特有の香りや新鮮な味わいが楽しめます。

近年増えているのが、瓶詰めしてから1回だけ火入れする「瓶燗(びんかん)」という手法です。
冷酒のまま、4号瓶などの容量の小さい瓶に詰めて、栓をして瓶を62~63度の湯の中につけて加熱します。文字通り、瓶のままお燗の要領で行う火入れです。

5. 貯蔵
日本酒をタンクや瓶に詰めてから出荷するまで、数週間から、長い場合は1年以上貯蔵します。
貯蔵の目的は、酒質を落ち着かせることにあります。
貯蔵している間にお酒の色や味、香りなどが徐々に変化していくことを「熟成(じゅくせい)」といいます。熟成によって新酒特有の舌を刺すようなあらさや麹のにおいが消え、香味が調い、お酒全体が丸く飲みやすくなります。
それゆえ、貯蔵期間の長短(出荷の時期)によって味わいに変化が出ます。

醪を搾ってから一度も火入れをせず、貯蔵期間を置かずにすぐ出荷される日本酒は、生酒の一種として「新酒」「しぼりたて」と表記されます。新鮮な風味と爽やかな味わいが特長です。また、酵母がまだ生きているので、自然に炭酸ガスを含むものもあります。
斗瓶と呼ばれる18リットルの瓶に入れ、冷蔵庫で貯蔵した日本酒を「斗瓶囲い」と言います。斗瓶は一升瓶10本分の容量で、タンクよりはるかに小さいため、品質管理がしやすく、丁寧に熟成を進めることができます。まろやかでスムーズな酒質が多いです。
杉の木樽で貯蔵された日本酒を「樽酒(たるざけ)」と呼び、爽やかな杉の香りがする日本酒になります。
数年、場合によっては10年以上にわたり貯蔵して出荷される日本酒を「熟成酒」「古酒」と呼びます。年ごとに味わいが微妙に変わることがあり、その変化を楽しむことができます。

熟成・貯蔵する際、特に大事なのが温度です。火入れ後のお酒はなるべく早く冷却し、お酒の品質が落ちることを防ぎます。そのため、室温は15~20度に保ちます。

6.調合(ちょうごう)
「調合」とは、お酒の成分を揃え、酒質のばらつきをなくすことです。
1本1本のタンクにでき上がったお酒の成分や酒質を均一にし、年間を通じて一定の品質の製品として出荷するために調合を行います。
その際、アルコール分、日本酒度、酸度などの分析値と、色や香り、味などの利き酒の成績を参考にして行います。

7.割水(わりみず)
日本酒に仕込み水を加えてアルコール度数を調整する作業を「割水」と呼びます。
上槽したばかりの日本酒のアルコール度数は約17~20度あるので、通常は、割水によってアルコール度数15~16度に仕上げます。

割水を全く使わない日本酒は「原酒(げんしゅ)」と表記されます。アルコール度数が高く、インパクトのある香味が特長です。
近年、多く見られるようになった表記が「無濾過生原酒 (むろかなまげんしゅ)」です。「無濾過=濾過をしない」「生=火入れをしない」「原酒=割水をしない」お酒です。日本酒本来の色調、香り、味わいを十分に感じさせ、それでいて新鮮で軽やかな風味があります。

8.火入れ(2回目)
一般的に日本酒は品質を安定させ、保存性を高めるために火入れを2回行います。2回目の火入れは通常、瓶詰め直前に行います。

9.瓶詰め
最後に日本酒を瓶に詰めて、ラベルなどを貼って出荷できる状態に仕上げます。
洗瓶されたうえで機械による充填作業が行われますが、量が少ない日本酒の場合は手作業になることも多いです。

日本酒の種類による名称

名称 意味
濁り酒 上槽するときに、ある程度の粗い網や布などで濾過した白濁した日本酒です。
滓酒 滓引きした後に残った白濁した日本酒を製品にしたものです。
無濾過 滓引きのみ行い、濾過をしていない日本酒です。
生酒 上槽してから出荷するまで、まったく火入れをしていない日本酒です。
斗瓶囲い 一斗瓶に貯蔵した日本酒です。
樽酒 樽に入れて木の香りをつけた日本酒です。
熟成酒・古酒 数年貯蔵して出荷される日本酒です。
原酒 醪を上槽してからまったく水を加えないで出荷する日本酒です。
無濾過生原酒 濾過、火入れ、割水をしない日本酒です。

醪から生まれた日本酒は、上槽・滓引き・濾過・火入れ・貯蔵・調合・割水・瓶詰という工程を経て、商品として出荷されます。
その幾つもの工程の中で、どのように酒を搾るのか、火入れをするのかしないのか、貯蔵は瓶ににするのか、タンクなのか、といったさまざまな組み合わせがあり、それが日本酒の味わいの違いとして反映されます。こうした上槽や貯蔵の方法による味わいの違いを知ることもまた、日本酒への楽しみを広げてくれます。

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