約2~5週間で「酒母(しゅぼ)」ができあがると、次は醪造り(もろみづくり)の工程に入ります。酒母を1つの大型タンクに移し、そこに仕込み水、蒸米、米麹を入れて、 本格的なアルコール発酵(醸造)を行う最終段階が醪造りです。
醪造りは、仕込み水、蒸米、米麹を4日間で3回に分けて投入する「三段仕込み(さんだんじこみ)」で進みます。3回に分ける理由は、酵母に水、蒸米、米麹を一気に投入すると、せっかく培養した酵母の数が減ったり、雑菌にやられてしまったりすることを防ぐためです。
三段仕込みの進め方
1日目 初添(はつぞえ) 酒母に水、蒸米、米麹を加える。酒母の約3倍に増える
2日目 踊り(おどり) 何も投入せずに、醪の中で酵母が増殖するのを待つ
3日目 仲添(なかぞえ) 再び、水、蒸米、米麹を加える。最初の酒母の7倍程度の量に増える
4日目 留添(とめぞえ) さらにもう一度、水、蒸米、米麹を加える。
20~30日 醪(もろみ) タンク内で糖化とアルコール発酵が同時に行われる「並行複発酵」が始まる。
日本酒は糖化と発酵のバランスが大事
ワインは、ブドウの中にすでに含まれている糖分を酵母がそのまま利用して発酵する「単発酵」です。
対して、日本酒は、米麹の酵素が米を糖化するのを追いかけるように、酵母が糖分をアルコール化していく「並行複発酵」です。糖化と発酵が同時にバランスよく進む「並行複発酵」により、日本酒は醸造酒として世界最高のアルコール度数20度まで仕上がるのです。
糖分がないと発酵しませんが、糖分が多すぎても酵母が糖を消費する効率が落ちて発酵がうまく進みません。ですから、日本酒は糖化と発酵のバランスがとても大事です。
発酵をどのくらいまで行うかによりお酒の味が変わってきます。
糖分を全て発酵させてしまうと、甘さのない日本酒になってしまうので、発酵をどのくらいのアルコール度数で止めるかが重要になります。
酒母や仕込み水が多い場合は、醪の発酵が盛んになり辛口の日本酒に仕上がりますが、逆に酒母や仕込み水を少なめにして発酵を抑えれば、甘口の日本酒になります。
糖分を残すように発酵を終了するか、しないかで、甘口か辛口かが決まります。
15度前後をキープする温度管理
醪の品温は、放っておけば20度ほどになります。それは、酵母が増殖したりアルコール発酵したりするときに、たくさんの熱を出すからです。
しかし、温度が高すぎると発酵が進みすぎて酒質が悪くなるため、品温を15度前後に抑え、調節します。醪タンクの温度管理は、かつて蔵人が夜中に品温を計測していました。今は、タンクに冷却用のジャケットを巻き、温度が上がりすぎた場合にはポンプから冷水を送って設定温度まで醪の品温を下げるといった機械化が進んでいます。
四段仕込みについて
三段仕込みの「留添え」の後、さらにもう一段仕込むことを「四段仕込み」と言います。
日本酒を甘口にするために行うのが目的なので、四段仕込みでは糖化だけを行い、発酵はさせません。
※参考
盛川酒造「白鴻 四段仕込み純米酒 赤ラベル」は、四段仕込みで造られている日本酒です。
醸造アルコールの添加について
醪の完成後、醸造アルコールを添加する場合があります。かつては日本酒の量を増やすために行われていましたが、現在は酒質を軽くて綺麗にするためにアルコール添加が行われています。
アルコール添加の主な目的として、主に下記が挙げられます。
・香味調整
味わいの淡麗化や華やかな香気成分を引き出すため
・コストの軽減
・腐敗防止
高いアルコールを添加することにより醪の腐敗を防ぐ
このように温度管理に細心の注意を払いながら約1カ月の間、育てられた醪は、最終的に杜氏の判断で、いよいよ搾りの工程(上槽)へと移ります。
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